地に還る/地から足を離す Return to the ground/Off the ground

2018

Gallery PARC,Kyoto,Japan

Mixed Media

Demensions variable

 

Photo by Hyogo Mugyuda

Courtesy of Gallery PARC

​cinematography and editing by Shimada Yoshitaka

 

 

小出麻代は「自分がどう生きていくか、どう生きていけるか」を考え続ける中で、「豊かさとは何か」という問いを持ち、様々な場所・土地を訪れ、多くの人々と出会うことに積極的に取り組んでいます。そのひとつの機会として2018年の夏の1ヶ月、ポートランド(アメリカ) でのレジデンスに参加した小出は、短い滞在の中でポートランドの歴史や風土、人々の暮らしの中に様々な発見を積み重ねます。ポートランドには古くから多くの日本人が移住し、日本人街(Japanese Town)が建設されていたこと。第二次世界大戦時に多くの日系人がトランクひとつで収容所に集められ、そこでの暮らしを余儀なくされたこと。収容所で支給された木材を使って、机や椅子、ベッドやタンスなどの「生活に必要な実用品」をつくった彼らが、玩具や遊具、彫刻や絵画などをもつくっていたこと、それらは総じて「CAMP ART」と呼ばれていることなどを知った小出は、とりわけ「小さな鳥のピン」が気に留まりました。そのピンは、見たことのないカタチの鳥もあれば、鶴のカタチをしたピンもあるなど、どれも小さいけれど丁寧な彫刻と彩色が施されていたそうです。 小出は本展に寄せた手紙の中で『手を動かし続けることは、 祈ることと似ている』と言っています。手を動かすことで今日を明日に繋ぐこと。そうして、より良い明日を想い・願い・祈ること。また、その明日を自ら「つくる」ために、やはり手を動かすこと。そうして懸命に生きるなかで小さな祈りを込めた彼らと同様に、本展において小出は、手を動かすことで自身の「生きること」を模索します。

小出はシルクスクリーンや写真プリント、型抜き成型したシリコンによるオブジェクトなどとともに、ガラス・鏡・電球・糸・紙・落ち 葉・枝・針金など、私たちが日常に目と手に触れる素材を空間に配したインスタレーションを手がけます。小出の「つくったもの」や「みつけたもの」は、自身の記憶や体験、あるいは展示空間での発見を取り入れながら会場内に(点)として配されます。ここで鑑賞者は、 素材・形態・位置・距離・在り方などに自身の発見や想像によって関係性(線)を見出すこと、あるいは記憶を依り代とした情景(面)を見ることなど、それぞれの時間を過ごすことができます。 小出は、それらが見出され、呼び出されるために必要と思われる 「間」に注意を払いながら、空間内に「もの」を丁寧に配置します。また、近年では光(と影)、あるいは鏡(と虚像)などによって生じる関係を用いることで、ものと鑑賞者と空間のそれぞれが出会い(すれ違う)「瞬間」を内包させることにも意識を向けているように思えます。また空間や素材への意識は、それぞれが含み持つ時間(歴史) への眼差しとして、近年では土地やものを始点としたリサーチにも積極的に取り組んでいます。

本展において小出は、2階の展示空間に「鏡、1年ほど前に拾った枯れ葉、枝、シリコンによる独楽」といった要素を配置し、それらを光によって関係させています。3階ではポートランドで制作した、活版印刷による9つの言葉を9葉の紙に印刷し、それぞれに色を関わらせた作品を展示。4階には、2階と同じく鏡と光を用いた作品が拡がりますが、ここでは自然光と関わることで、朝・昼・夕・夜や天気、 鑑賞者の位置によって、それぞれの要素に見いだす関係性が刻々と変化する様を見ることができます。 小出は展示空間にゆっくりと留まるなかで時間や空間において「見えるもの / 見えないもの」を見据えながら、「ものともの」や「ものとひと」の間に生じる関係を想い、手を動かしてきました。それ は「見えるもの」だけをすべてとするのではなく、「見えないもの」を眼差し、想像することや、「見ようとする」自らの動きが目の前の風景をより豊かなものとすることに気づかせてくれるようです。<会場配布テキストより>

 

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